緑内障は、眼球内を満たす「眼房水(がんぼうすい)」の産生と排出のバランスが崩れ、眼圧が上昇する疾患です。眼圧が高い状態が続くと視神経が急速に障害され、数日で視覚を失ってしまうこともあり、非常に強い痛みを伴うため、早期発見と迅速な治療が非常に重要です。
緑内障とは
原因
緑内障は大きく2種類に分類されます。
● 原発性緑内障
ほかの眼疾患がない状態で、遺伝的な要因や房水の通路構造の異常によって発症します。
犬ではシベリアンハスキー、柴犬、アメリカンコッカースパニエル、シーズーなどに多く、
猫ではバーミーズ、シャム、ペルシャなどが知られています。
● 続発性緑内障
別の疾患が原因となり、房水の排出が妨げられて発症するタイプです。
代表的な原因疾患には、
- ブドウ膜炎
- 白内障
- 水晶体脱臼
- 眼内腫瘍
- 高血圧
などがあります。
猫の緑内障はほとんどが続発性といわれています。
症状
急性型では突然強い症状が現れ、慢性型では少しずつ進行するため気付きにくい場合があります。
代表的な症状
- 結膜・強膜の充血
- 目の痛み(目を細める・瞬きが増える・元気や食欲低下・ふるえ)
- 涙の増加
- まぶたの痙攣
- 角膜の白濁
- 瞳孔が開いたままになる
- 視覚の低下(物にぶつかる、動きが鈍くなる)
眼圧が非常に高い状態が続くと、
- 牛眼(眼球が大きく見える)
- 眼の奥が緑色に光って見える
- 最終的には眼球破裂
に至ることもあります。
診断
緑内障が疑われる際は、以下の検査を組み合わせて診断します。
- 眼圧測定:眼圧が高値であるかを確認
- 視覚検査:威嚇瞬き検査(手をかざすと瞬きをするか)、対光反射検査(光を入れると瞳孔が縮むか)、迷路試験(ものにぶつからずに歩けるか)などを行います。
- スリットランプ検査(細隙灯顕微鏡検査):細い光を当てて角膜と水晶体の断面を詳しく調べます。眼に光を当て、視神経乳頭や網膜の変化を観察し重症度を判断します。
- 隅角検査:隅角と呼ばれる房水の出口を観察し、隅角の広さや形態異常がないかを確認し緑内障のタイプ(開放隅角緑内障か閉塞隅角緑内障か)を特定します。
- 眼底検査:目に光を当て、視神経乳頭や網膜、眼底領域の血管走行の状態などを観察します。これにより視神経の損傷の有無や程度、網膜の健康状態を評価できます。
- 超音波検査:水晶体脱臼や眼内腫瘍、網膜剥離などの内部異常がないかを確認します。また、眼球サイズを計測できます。
必要に応じて、内科疾患(高血圧、感染症など)の有無も調べ、続発性の原因を特定します。
治療
緑内障の治療は、「視覚を守る治療」と「痛みを取り生活の質を保つ治療」に分かれます。
視覚の有無や、緑内障のタイプ・進行度によって治療法を選択します。
〈内科治療(点眼)〉
複数の点眼薬を併用し、
- 房水の産生を抑える
- 排出を促す
ことで眼圧を下げます。
慢性疾患のため、基本的に継続した点眼治療が必要です。
〈外科治療〉
● 視覚が残っている場合
- 前房内シャント設置術
房水の新たな出口を作り、眼圧を下げる手術です。 - 経強膜毛様体光凝固(半導体レーザー)
毛様体をレーザーで凝固し、房水の産生を減少させます。
目の痛みを軽減し、点眼の負担を減らせる場合もあります。
● 視覚がすでに失われている場合
目的は「眼の痛みを確実に軽減し、生活の質を保つこと」です。
- ゲンタマイシン硝子体内注入術
毛様体機能を停止させ、眼圧を確実に下げます。 - シリコンインプラント挿入術
眼球の形を保ちながら外観を維持する方法です。 - 眼球摘出術
痛みが強い場合や腫瘍が原因の緑内障では根治的に摘出を行うことがあります。
ご家庭での注意点・予防
緑内障は予防が難しく、わずかな時間で視覚を失うこともある疾患です。
以下のような小さなサインを見逃さないことが早期発見につながります。
- 片目だけ充血している
- 目を触られるのを嫌がる
- いつもより涙が多い
- 明るい場所なのに瞳孔が大きい
- 物にぶつかりやすくなった
特に原発性緑内障はもう片方の眼も高い確率で発症するため、継続的な眼圧測定や定期的な眼科検診が重要です。
まとめ
緑内障は、視覚の喪失や眼球破裂など重篤な状態に進行する危険な疾患です。
一度失われた視覚は取り戻すことができないため、早期の診断・治療が何より重要です。
「もしかして緑内障かもしれない」と感じる症状があれば、
できるだけ早く眼科診療を受けてください。