出産は人間と同じく大きなライフイベントの一つです。愛犬・愛猫の妊娠が判明、あるいは子供を産ませる予定がある方は事前に出産についての知識を身につけましょう。
はじめに
出産に備えて
出産は自宅でも動物病院でも行うことができます。いずれにしても正しく入念な準備が大切になっていきます。
・定期検診:犬猫の妊娠期間は約2ヶ月です。交配あるいは妊娠に気が付いたら1週間~10日に1度は病院に行き定期検診を受けることをおすすめします。予定日や難産になりやすい子かどうかを事前に知っておきましょう。
・体温測定:予定日の10日ほど前から朝晩または朝昼晩と時間を決めて体温を測りましょう。犬猫の平熱は38~39度です。体温低下は出産が近づいている目印になります。また巣作り行動やソワソワして落ち着かない様子も指標の一つになります。
・産箱:自宅で出産する場合は予定日の数日前に産箱を用意しましょう。小型犬や猫の場合には段ボール箱に、中~大型犬の場合にはサークルや小さなお部屋にタオルやペットシーツを敷き、安心できるような静かで暗い環境を用意しましょう。
・動物病院のサポート:妊娠中は体がとても不安定な時期で、いつ何が起こっても不思議ではなく、命に関わる恐れもあります。特に初めて自宅で出産を行う場合には、必ずかかりつけの病院で指導を受けるようにしましょう。また夜間や緊急時にすぐに相談・対応ができる動物病院の連絡先を用意しておきましょう。
出産後の母犬・母猫のケア
産後には子宮感染症や胎盤停滞などを発症することがあります。外陰部から出血が続いたり、悪露の匂いが強い場合、発熱やぐったりしているなど状態が悪そうな兆候を見つけた場合にはすぐに診察を受けてください。
またこれから赤ちゃんを育てていく母親に起こりがちな授乳期の栄養不良やカロリー不足に対応できるフードのご提案もさせて頂きます。これらのフードは妊娠期にも母親と胎仔の栄養状態をサポートします。ぜひご利用ください。
子犬・子猫の育て方
子犬・子猫は新生仔期、移行期、社会化期を通し、成長していきます。生まれたての赤ちゃんは非常に愛くるしくてかわいいですが、とても繊細です。それぞれの時期に応じたおうちでの過ごし方、育て方のポイントを紹介していきます。
・新生児期(出生~生後2週間)
生まれたての子犬・子猫はまだ目が開いておらず、自分でご飯を食べたり、自力で排泄することもできません。母親が自分でお世話をできるに越したことはありませんが、育児放棄したり、嫌がることも珍しいことではありません。赤ちゃんがスクスクと元気に成長してくれるように、お世話をお手伝いしましょう。
【食事と体重管理】
2~4時間おきに体重を測ります。基本的には母乳で十分ですが、体重が停滞あるいは減少している場合は市販の犬猫用のミルクを飲ませ、1日当たり10-15gずつ体重が増えるように調節してください。冷たいミルクは赤ちゃんがお腹を壊す原因にもなるので、人肌またはそれより少し温かいくらいに温め、哺乳瓶であげてください。哺乳時は腹這いにさせ、顔を少し上にあげて哺乳瓶の乳首を口の正面からまっすぐ咥えさせます。
母親が授乳を嫌がっていたり、育児放棄をしている場合には完全に人工保育に切り替える必要があり、獣医師に相談した上で同様の方法で市販のミルクをあげてください。生まれたばかりの子は空腹時間が長くなると低血糖になりやすく、そうなってしまった場合には死に至ることもあります。しっかり母乳を飲めているか確認し、こまめにミルクを与えるようにしてください。
【排泄】
ぬるま湯で湿らせたティッシュやコットンで肛門周囲をトントンと優しく刺激するようにして排泄を促します。体重測定の前に行うとより正確な体重が分かります。
【温度管理】
この時期は体温調節機能がまだ十分に備わっていないため、部屋の温度は28~32度程度、湿度は50~60%と暖かめに維持してあげましょう。
・移行期(生後2~3週間)
生後2週間を過ぎると前脚を使って動くようになります。徐々に目が開いてきますが、視覚は未発達で、耳も同様です。いずれもしっかり見えたり聞こえたりできるようになるのは4週齢を過ぎてからです。また自力排泄も可能になり、トイレを覚えていないうちは垂れ流してしまうので綺麗にしてあげる必要があります。生後3週間頃までは母乳およびミルクからのみ栄養を摂取するのでまだフードやお水の準備は必要ありません。
・社会化期(犬:生後3~14週間、猫:生後2~9週間)
生後3週間を過ぎると社会化期に突入します。この時期は脳の成長速度が加速し、人やほかの動物、周りの環境に対してとても敏感になります。今後の人生においてとても重要な時期と言われているので、積極的に声をかけたり、一緒に遊んであげましょう。社会化が不十分だった子は、問題行動を起こしやすい傾向があります。
また生後3週を超えると乳歯が生えてくるので、ミルクを卒業して子犬/子猫用フードに切り替えていきましょう。まずは哺乳瓶からあげていたミルクを徐々にお皿から自分で飲めるように慣らしていきます。一気に切り替えるのではなくて、1週間くらいかけてゆっくりお皿から飲ませるミルクの量を増やしていきましょう。お皿から食事をすることに慣れたら徐々にミルクに柔らかいウェットフードを混ぜ、さらにドライフードも混ぜるようにしていきます。ミルクを飲む(吸う)とフードを食べるではお口の使い方が全く異なるので、この過程は2-3週間ずつゆっくりと時間をかけます。離乳は通常6-9週齢で完了するようにします。ミルク→ウェットフード→ドライフードと移行していくうちに、軟便や下痢が見られることがあります。そういったときには腸が未発達であると考え、1段階前のフードあるいはミルクを与え、様子を見て、数日後に再チャレンジします。